ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

荒野の誓い / 抒情的な映像に込められた痛烈なメッセージを受け止めよ

f:id:madamkakikaki:20201004192225j:plain


1892年、アメリカ陸軍大尉のジョーは、かつて宿敵関係にあったシャイアン族の酋長イエロー・ホークとその家族を故郷へ護送する任務を命じられ渋々出立する。

その途中でコマンチ族によって家族を虐殺された女性ロザリーと出会い、彼女を保護した一行は北を目指すが、それは互いの協力無しには乗り越えられない過酷な旅であった。



ジョーは先の戦争で多くの仲間を殺したインディアンに対して激しい憎悪をむき出しにするんだけれど、インディアンにしてみれば元々自分たちが住んでいたところに白人が攻め入ってきて家族や同胞をぶっ殺されたのだから、それこそジョーたちが憎くてたまらないわけです。

そんな憎み合う者同士が一緒に旅をするなんて、途中で殺し合いにでもなったらどうすんのさ、と思いましたが、そんなわたしの心配はとりあえず杞憂でありました。

道中、彼らは幾度となく命を落としかねない危険な目にあいます。
両者に共通の敵が現れた以上、もはや互いに敵だの憎いだの言ってる場合ではない。殺されないためには協力し合うしかないとイエロー・ホークに諭され、ジョーも仕方なく同意したんですね。まぁそれでも渋々です。

護衛せよとの命令に従ったのも渋々、インディアンと協力するのも渋々。
名付けて「渋々のジョー」(笑)

f:id:madamkakikaki:20200721143208j:plain


この過酷な旅では、ジョーの部下を含め何人もの人が命を落とします。(コマンチ族とあの偉そうなジジイ親子は逝ってよしw )
死ななくていい人まで死んじゃうのでなんとも哀れでたまらんのですが、このあたりはやっぱりスコット・クーパー監督らしいというか、容赦がないというか・・・


ま、ガンガン死なせるよね!(褒めてる)


f:id:madamkakikaki:20200721163406j:plain  

先の戦争で女子供の見境もなくたくさんのインディアンを殺し、しかもそれを仕事と言い切るジョー。
自分のしたことはさておき仲間を殺したインディアンに復讐を!などとのたまうジョー。
軍法会議にかけられて年金がもらえないと困るから渋々護衛を引き受けたジョー(これは余計かな)。


そんな彼が、戦場でないところで人が理不尽に死んでいくのを目の当たりにしながら我が身を振りかえり、復讐と赦しの狭間で葛藤し慟哭する姿は本作一番の見どころでありましょう。

そしてイエロー・ホークにある言葉をかけて自ら手を差し出すシーン、これも胸にグッとくる非常にいいシーンでありますね。



西部劇と言いつつ、本作は勧善懲悪ものでも、復讐を美化するものでもありません。

勝手に誰かを敵だと思っているとして、自分はその者のことを果たしてどれだけ知っているのか。
ただ思い込みや偏見だけで相手を憎み、非難していないか。何の根拠もなく攻撃してはいないか。


f:id:madamkakikaki:20200721171340j:plain

これはまさしく、護衛の旅をとおしてジョーが得た気付きと同じなのではないでしょうか。
そんなことを、ジョーの心の変化をとおしてヘイトに塗れた現代社会に生きるわたしたちに鋭く訴えかけているような気がします。


冒頭でD・Hロレンスの「アメリカの本質は人殺し」 という言葉が映し出されるのも、相当に強いメッセージ性を感じますよね。


実はこの映画の撮影監督は、マサノブ・タカヤナギ(高柳雅暢)という日本人です。『ファーナスの朝』『世界でひとつのプレイブック』『スポットライト世紀のスクープ』などを手がけたハリウッドの逸材でありますね。

西部劇らしい広大で美しい映像、詩的でフォトジェニックな風景の切り取り、アクションシーンのダイナミックなビジュアルと、挙げればきりがないほど素晴らしい技巧の数々。これはもうね、日本人の誇りですよ。

f:id:madamkakikaki:20200721163245j:plain

脚本も秀逸だしクリスチャン・ベールもいいけれど、映像が本当に素晴らしいのでオススメです。
普段西部劇を観ない人にもぜひ観てほしいと思います。ラストもすごくいいですよ。



作品情報
▶原題  Hostiles
▶監督  スコット・クーパー
▶脚本  スコット・クーパー
▶製作年  2017年
▶製作国  アメリカ
▶出演  クリスチャン・ベール, ロザムンド・パイク




本作と同じくスコット・クーパー監督、マサノブ・タカヤナギ撮影監督、クリスチャン・ベール主演のこちらもオススメ⬇️