ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

バーニング 劇場版

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バーニング 劇場版 (2018年 韓国) 버닝


田舎育ちの主人公と幼なじみの彼女。友達以上恋人未満の二人の前にギャツビーの男が現れてから、主人公の運命の歯車が狂い出す。
メタファーだらけの春樹節はそのままに、現代の若者たちの心の闇や生きづらさを描きます。
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つい最近も話題になりましたが、ノーベル文学賞を逃すたびに「ハルキスト無念の涙」などといちいちニュースになってお気の毒な村上春樹氏。その村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を、韓国を代表する巨匠イ・チャンドン監督が大胆アレンジした148分の長編映画『バーニング』であります。

主人公ジョンスはアルバイトをしながら小説家を目指す田舎育ちの青年です。ある日ジョンスは、自分と幼なじみのヘミとの間に入り込んできた金持ち青年ベンから「僕は趣味でビニールハウスを燃やしてるんだ」という告白をされます。
しかも、つい最近君んちの近くを燃やしたよとベンは言いますが、そんな形跡もなければ火事の話も聞かない。そして、時を同じくしてヘミがいなくなります。

正直わたしは村上春樹作品はあまり読みません。ストーリーは単純なのに難しくて疲れるから。
冒頭でも書きましたが、やたらメタファーが多いし投げっぱなしだし、テーマがよくわからない。人によってどうにでも解釈できるので考察が非常にやりにくいんですね。


『納屋を焼く』では、ヘミにあたる女性が失踪するところで終わりますが、本作ではその先も描かれます。ここからは完全にイ・チャンドン監督の本領発揮ですね。
都会と田舎、金持ちと貧乏人、持つものと持たざる者、羨望と嫉妬、そして主人公の鬱屈した心と妄想。このへんはもうすごいですよ。なんせ『ペパーミントキャンディー』や『オアシス』など、人間の本質を痛いほど描き出す天才監督ですからね。


ビニールハウスの話に取り憑かれたジョンスが静かに暴走していくのがマジで怖かったです。

ジョンスよ、冷静に考えろ!早まるな!

で、思うにベンの『ビニールハウスを燃やす』というのは、”女を弄んで捨てる” 言わば金持ちの道楽なのではないか。
ベンはジョンスが物書きと知っているのであえて比喩表現で告白したのでしょう。それをジョンスは”殺す” と解釈した。へミはベンに弄ばれて殺されたのだと。

何一つ手にできない俺がやっと手に入れた彼女までこいつは奪ったのだと。

結果としてビニールハウスを燃やしたのはベンではなくジョンスだった。ヘミは殺されたのではなく自殺したのだ。
というオチが映画で語られるわけではありませんが、あくまでも一考察として受け止めていただければと思います。だからねー、メタファーだらけのお話は難しいんですよ。


いずれにしても、どこか鬱屈した若者たちが感じる退屈さや無関心や目的意識の薄弱さから来る”生きづらさ” みたいなものを、三者三様にうまく描き出しているなあという感じがします。

ヘミ役のチョン・ジョンソは見たことないと思ったら新人女優なんですね。文字通り身体を張った演技にあっぱれです。やっぱり韓国の俳優さんはみんなすごいわ。
久しぶりに難しい映画でしたが、なかなか面白かったです。


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