ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

ブラス! / 炭鉱町が生んだ英国一のブラスバンド

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ブラス! / Brassed Off!


鉱山閉鎖の危機に揺れるイギリス北部の小さな炭鉱町。伝統あるブラスバンドのメンバーたちも、いつ失業するかわからない自分たちのことで精一杯。
一方、隠居の身ではあるがブラスバンドへの情熱は人一倍強い指揮者のダニー(ピート・ポスルスウェイト)だけは全英選手権への出場を目指して張り切っていた・・・。



炭坑労働者で構成されるブラスバンドのメンバーたちの人間模様を味わい深いストーリーで描いた社会派(ちょっぴり)コメディ。実在する「グライムソープ・コリアリー・バンド」の実話をもとにストーリーが作られています。

演奏途中でバラけてしまうようなオンボロ楽器を買い替える余裕もなく、それどころか生活そのものがカツカツでいつ家族が露頭に迷うかも知れないというバンドマンたち。

彼らの日常を見ていると、本作は直接的ではないけれどサッチャリズムの負の遺産を皮肉っているのは明らかです。
でもやはり、音楽の力・音楽の素晴らしさが根底にあるおかげで 誰でもとっつきやすく観やすい作品に仕上がっていますね。

ちょうどユアン・マクレガーの出世作『トレインスポッティング』と重なったこともあって、本作もユアンを前面に押し出した宣伝になっているんですけど、実はお話のキモは、ブラスバンド存続にこだわるダニーと その息子フィル(スティーブン・トンプキンソン)の親子劇なのであります。


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これはね、どちらの気持ちも理解できるだけに観てるわたしも切なくなってしまいましたけれど、病院の庭で「ダニー・ボーイ」を演奏するシーンなんかはもう目が滝になりましたよね。

あれ以来「ダニー・ボーイ」のメロディを聴くとあのシーンが頭の中に蘇ってウルウルッとなるほど大好きなシーンです。


この映画の中で悪者として位置づけられているのは炭鉱の経営側なんですが、エネルギー資源の変遷、時代の流れとして炭鉱閉鎖は世界的に仕方のないことだったわけです。
まあそれでも「おまいらのやり方汚ねぇな!」と後半は怒り心頭で観てたわけなんですけどね。

そんな時代に炭鉱労働者として働いていた男たちの汗と涙と友情、また家族愛や地元愛を悲喜交交のストーリーで堪能でき、各々のシーンを彩るブラス音楽も心地よくてほんとに見応えがあったなあと思います。


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クライマックスで演奏される「ウィリアム・テル序曲」そして「威風堂々」の凱旋。
あのラストはこの上なく素晴らしく、また晴れの舞台であるはずの場所で ダニーが労働者たちの窮状を切々と語るシーンは胸に迫るものがありました。


イギリスの社会派映画はどうしても地味だとか暗いとかいうイメージを持たれがちで、本作もやっぱり地味な部類ではあるんだけれど、観終わってしみじみと音楽の素晴らしさ、ひいては映画の素晴らしさを実感できるという点で、この『ブラス!』はまさに隠れた名作だとわたしは思います。なのでぜひ多くの人たちに観てもらいたい。

音楽好きの人ならなおさら、また実際に楽器をやってる人じゃなくても、この映画を観終わったら「ブラスバンドやりたい!」って思っちゃうかもしれないよ。


それにしてもユアン・マクレガーの吹き真似はひどかった。せめて息継ぎのタイミングくらい曲に合わせにゃいかんじゃろ(笑)

f:id:madamkakikaki:20200719104703j:plain え?合ってない?


すったもんだして色々大変だったけどやっぱりオレらの団結力はさいこうだぜ!! の圧巻の演奏シーン貼っておきます。

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作品情報
▶原題 Brassed Off
▶監督 マーク・ハーマン
▶脚本 マーク・ハーマン
▶製作年 1996年
▶製作国 イギリス
▶出演 ピート・ポスルスウェイト, ユアン・マクレガー