ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

ブラインド・マッサージ

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ブラインド・マッサージ (2014) 推拿

【 見えなければ触れよ、わかりたければ手を伸ばせ。】


中国のベストセラー作家、畢飛宇の長編小説「推拿」を映画化した「ブラインド・マッサージ」。監督は中国の鬼才ロウ・イエです。この人はイタリアのフェデリコ・フェリーニやミケランジェロ・アントニオーニあたりに強くインスパイアされたと言うだけあって、男女間の愛の儚さや虚しさ、人間の不安や孤独などを悲観的にまた赤裸々に描く天才ですね。かなりガツンとくる映画を作る監督さんであります。

推拿(すいな)とは鍼灸、漢方と並ぶ三大療法の一つなのだそうですね。この映画は、その推拿を行う盲人マッサージ院で働く人々の群像劇です。

経済力はあるのに全盲という理由で何度も見合いに失敗している院長とか、駆け落ち同然で転がり込んできたカップルとか、そのカップルの女のほうに片想いして悶々としている童貞くんとか、まあいろいろおります。


この盲人の療法士の大多数は素人で、本物の俳優は4人しかおりません。わたし中国の俳優さんはあまり知らないのですが、主人公のホアンシュエンと院長役のチンハオは「空海」に出ている人ですね。2人ともかなりのイケメンであります。

群像劇ではありますけれど、主人公は悶々童貞くんのホアンシュエンです。幼い頃に事故で視力を失い、絶望感から自殺未遂をした過去があります。彼は就職したマッサージ院で様々な経験をしながら、世の中の不条理さとか生きることの意味とか、人を愛するとはどういうことなのかを身をもって学んでいくわけですね。
彼の周囲で起こること全てが、彼の学びの糧となります。でもそれらは決して綺麗事ではありません。観ていて辛いし、歯痒いし、やるせない気持ちで非常に胸が苦しい思いがします。


コミカルなシーンもありますが、心から笑える気にはなれません。

終盤にもなると、ロウ・イエ監督お得意のペシミズムの沼に突き落とされたような気分で、半ば放心状態のババァがおります。


本作で唯一の美人(失礼!) メイティンの「人と車がぶつかると事故になるが、人と人がぶつかると恋になる」という台詞がなかなか深くて面白いです。
彼らは見えないぶん触れたり聴いたり、匂いを嗅いだりして相手を知ろうとします。健常者がつい左右されてしまいがちな「見た目」はそこにありません。言い換えれば彼らは人の内面を見ます。真実を見抜きます。それゆえに悩み、苦しみ、迷います。

そしてそれを乗り越えたとき、彼らは真の意味での「光を見る目」を持つのかもしれません。


役者さんはもちろん、素人とは思えない皆さんの体当たりの演技に脱帽です。
とてもシビアで生々しく、人間の性(さが)丸出しと言うと聞こえが悪いですけども、障害者を憐れむわけでもなく障害を美化するでもなく、運命に翻弄されもがきながら懸命に生きる人間たちをひたすら描くことに徹する。
地味ではあっても非常に力強い、衝撃的な作品でありました。いいです、すごくいい。

 

 

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