ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

変態島

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変態島 (2008年 フランス・ベルギー・イギリス・オーストラリア合作) Vinyan


半年前に津波で幼い息子を亡くした夫婦。偶然あるビデオを観て息子は生きていると確信した母親は、しぶる夫とともにタイの国境封鎖地帯へ向かいます。
藁をもすがる思いで我が子を追う母親の悲しくも凄まじい姿を、美しき国際派アヒル口女優エマニュエル・べアールが迫真の演技で魅せつけます。痺れます。
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「我こそが今世紀最大の変態」と豪語するベルギーの映画監督、ファブリス・ドゥ・ヴェルツ。
カッペの変態どもがケダモノ以下の狂気をぶちかます「変態村」という凄まじい破壊力の最低映画で名を上げた(?) アングラ系オタク監督であります。いやーあれは酷かったね (ある意味褒めてます)。

そんなファブちゃんが次に世に放った本作「変態島」ですけれどもね。
センス抜群の邦題「変態村」に対して今回はひどい。ひどすぎる。何が「5分に1回は変態」だよふざけんじゃねえぞ。担当者ぜったい映画観てないだろ。
変態でもないしエロでもないしサイコでもない。

我が子の死を受け入れられずどこかで生きているはずだと追い求める母親の、痛々しくも強烈な執念を描いたエモい作品 ですよこれは。


お話の舞台はタイです。原題の「Vinyan」は、タイ語で成仏できない幽霊や魂という意味なんだそうですね。
本作は先ほど述べた母親のお話に加えて、貧困国の問題や子供の人身売買についても触れられていますので、大人の欲や身勝手な都合で売られたり命を落としたりする子供たちの怨念を思えば「変態島」なんてタイトルはもってのほかです。マーケティングのためだけにつけられた、映画というものを馬鹿にしたタイトル詐欺ですよ。おまわりさーん!!

韓国映画に「母なる証明」という作品がありますね。あの物語でも常軌を逸した母親の執念が描かれていますが、それくらい母親の愛というのは強烈で凄まじいのです。

普段ぽやんとしてるわたしでも、娘が酷い目にあわされたり殺されでもしようもんなら、般若のごとく怒り狂い何をするかわかりません。一生狂ったままかもしれません。
愛と狂気は紙一重。ごく普通の人間が何かの拍子に狂っていくさまをリアルに描いた本作は、ある意味非常に怖いホラー映画でもあります。

思わず早送りしたくなるほどのしつこい情景描写、じとーっとしたアングラな雰囲気、それでいて映画全体がアーティスティック。
大いに観る人を選ぶ映画であるのは間違いありませんが、やっぱりこのファブリス・ドゥ・ヴェルツという人はただの変態監督じゃないんだな、とわたしは思いましたね。くどいようですが褒めてますよ。


ちなみに、本物の変態の狂気を見たいなら断トツで「変態村」をおすすめします。観終わったあとやり場のない思いにかられて後悔してもオレは知らないけどね!!