ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

ナチュラルウーマン

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ナチュラルウーマン (2017) Una mujer fantástica

【 これが、私の生きる道。】


これ、てっきりスペイン映画と思っていたらチリ映画でした。冒頭からイグアスの滝だったから南米ですよね、そりゃそうだ。
主人公マリーナを演じているのは、チリのオペラ歌手であるダニエラ・ベガ。わたしこの人のことは全然知らなくて、えらく歌が上手いなあと思いながら観ていてね。あとで調べてなるほどザワールドでした(死語)。

マリーナはトランスジェンダーで、親子ほど年の離れた初老の男性オルランドがパートナーです。二人の関係はとてもいいものでしたが、オルランドの突然の死によって、マリーナに様々な困難が襲いかかってきます。
いわゆる「自分と異質なもの」に対する差別や軽蔑、嫌悪、排除といった感情をあらわにする人々。わたしは理解していると言いながら特別視しようとする偽善者。オルランドの親族に酷い仕打ちをされるシーンは本当に怒りをおぼえます。

本作で描かれるのは、マリーナが辛い状況を健気に耐え忍ぶ姿ではありません。
彼女は歌の師匠にかけられた言葉に力をもらい、「自分がなすべきことをする」決意をします。困難を乗り越えるためには迷いを捨てること、侮蔑的な人間のくだらない妄想には目もくれず堂々と生きること。


「ある物」が入っているのではないかと誰もが思ったであろうあのロッカーには何もありませんでした。そして亡きオルランドに導かれるように、マリーナは彼のなきがらに最後のお別れを告げることができました。これはまさに、マリーナがオルランドへの思いを断ち切り、前を向いて生きていくのだなと思わせるシーンです。

さらにもう一つ特筆すべきは、完全に性転換していないトランス女性が裸になる、という点です。特にお話の後半には、マリーナが男の身体であっても「女性としての価値」を自分に見出す重要なシーンがあります。これはね、もう見事としか言いようがありません。
この映画を本物のトランス女性が演じたというのも素晴らしいけれど、自然に生きようとしているジェンダーの人々に対して我々がいかに色眼鏡で見ているかを問うに十分な、斬新で美しく、それでいて鋭い演出だと思います。

本作の原題はスペイン語で「すばらしい女性」だそうです。
まさにその名の通り、主人公のマリーナも彼女を演じたダニエラ・ベガも本当に魅力的です。

本職であるオペラの歌声もぜひご堪能くださいまし。


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  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: DVD