ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

アス

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アス (2019年 アメリカ) Us


だからアタシ言ったじゃない。あのビーチには行きたくないって。あなたたちには言ってなかったけどアタシは子供の頃あそこで恐ろしい体験をしたの。きっと何か悪いことが起きそうな不吉な予感がするわ・・・
え、窓の外に家族みたいな人たちが立ってるって?夜遅くに何なのよ気味が悪い。あっ見に行っちゃだめよ、あなたドアを開けないで!外に出ると危ないわ、出ないであなた、出るなつってんだろこのバカ!フ〇ッキンステイホーム!!

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日々コロナとたたかう皆さんこんにちは。ステイホームしてますか。どうも、長嶋茂雄です。

さて、自分たち家族と瓜二つのドッペルゲンガーが殺意むき出しで襲ってくる『アス』、あの『ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督堂々のスリラーホラー2作目であります。

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この映画で非常に興味深かったのは、空前のチャリティブームに沸く80年代に開催された「ハンズ・アクロス・アメリカ」というイベントです。

これはざっと言うと「みんなで同じ時間に手を繋ぎ 人間の鎖で太平洋と大西洋を繋げよう」というもので、参加できたのはそれなりの寄付をした人だけ。
結果的に経費やら何やらを差し引くと大した金額にならなかったという、要するに「貧乏人のためにいい事してる金持ちのオレらSUGEE」てなイメージ重視のクソチャリティですね。

もちろん寄付や募金そのものはいいことだと思いますが、それは本当に必要としている人に正しく使われてこそ。余計なイベントがくっついたせいで大半が経費に回されるなんてのはもってのほかです。
つまり何を言いたいかというと、「理想を唱えるパフォーマンスでは何も救えない」ということです。

監督の言葉を借りれば

目の前で困っている人たちに対して“即刻性を持って”助けるのではなく、計画的に“人々が連帯する” というイメージを持たせることに対する違和感。

 

これは何もアメリカに限らず我が国でも、いや先進国全てに言えることでありましょう。
(主に中流意識を持つ者以上の) 人々が豊かな、あるいはまともな生活を送れている一方で 本作のドッペルゲンガーのように影となり貧しく虐げられた人々がたくさんいる。持つ者は持たざる者のことなど気にも留めない。

我々の生活が誰かの犠牲の上に成り立っているなんて考えもしないで、平等だの助け合いだのスローガンばかり掲げて何も実行に移せない。何故か。それは立場が逆である(もしくは逆になっていたかもしれない)自分を想像できないから。

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劇中のドッペルゲンガーたちが「地上にいる」自分に襲いかかったとき、地上の者はドッペルゲンガーを「悪い自分」と呼びました。果たして悪いのはどちらか。
表面だけ見ればドッペルゲンガー怖い、酷いことしやがると思ってしまいますが、お話が進み過去のいろんなことがわかってくると彼らに対する見方が変わってきます。このへんは非常に面白いし考えさせられる作りになっていますね。

 

そしてもう一つ面白いのは、いざ立場が逆転したときの怖さについても描かれている点です。
終盤からラストのシーンでびっくり仰天からの背筋が凍るような空恐ろしさを感じた人は多いと思います。これはもうどちらが良いとか悪いとかの話ではないですよね。

 

結局人間ってのは立場がどうあれ二元性があるということです。
程度の差こそあれ わたしもあなたも自分の中に相反する性質や感情や考え方を持っていて、都合良く使い分けながら生きているわけですね。
「わたし」はつまり「わたしたち」であるわけです。

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「United State」= 「US」そして「わたしたち」= 「US」

いやー面白いですね。『ゲット・アウト』とはまた違った切り口で理想という名の偽善と人間が持つ二元性を問う、よく出来た作品だと思います。
それにしても怖かった。そしてルピタ・ニョンゴの見事な二役演じ分けに脱帽です。や、素晴らしい。