ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

迫り来る嵐

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迫り来る嵐 (2017年 中国) 暴雪将至 / The Looming Storm


刑事ごっこの大好きな警備員が連続殺人事件の捜査に首を突っ込み、犯人マジ許せねえ俺が捕まえてやると勝手に独自捜査を始めたから大変です。
おっちゃん、それは正義の行使とちゃう!単なる誇大妄想やで!!
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主人公のユィさんは、大きな工場の保安部で警備の仕事をしています。工場内での窃盗の検挙で実績があり、正義感も強く同僚からも一目置かれるユィさん。容疑者を尋問したり尾行したりする姿はさながら刑事のようで、弟分の若造からは師匠と呼ばれております。
そんな刑事かぶれのユィさん、近くで連続する女性ばかりを狙った殺人事件に興味津々。私淑する警部や町の人から得た情報をもとに、ガチの張り込みを開始します。犯人野郎め、俺のキャリアをなめんじゃねえぞ。

大概こういうパラノイア人間は「我こそは正義の味方」「みんなが自分に期待している」などという誇大妄想にとりつかれています。
このユィさんも、捜査にのめり込むうちに正義への情熱が執念に変わり、その執念が彼を常軌を逸したとんでもない行動へ向かわせてしまいました。これはね、人として男として絶対やっちゃいかんことですよ。死ななくてもいい人が2人も死ぬなんて本末転倒でありますよムキー!

あまり怒るとサメ肌になりますのでこの辺にして、映画そのものの話を少ししておきます。

自ら脚本を書いたこの映画がデビュー作というドン・ユエ監督ですが、この人は映画の良さをよくわかっていて、映画を観せる、そして魅せる力のある監督さんだなあと思いますね。
土砂降りの中での追跡劇はとてもエキサイティングだし、メリハリのあるカメラワークやテンポの良さ、バイオレンス描写は比較的抑え目でありながらゾッとするような細かい演出をちりばめるなど、初作品とは思えないほどの出来栄えであります。
犯人や動機を一切明かさず、「一連の悲劇がなぜ起きたのか」という点に絞って 主人公の人間性を徹底的に掘り下げたのも素晴らしいですね。

”高度成長期” という名の時代の狭間で喘ぐ低所得層の労働者、変わりゆく時代について行けず過去の自分に固執したまま取り残される人々。
出所して浦島太郎状態のユィさんが、新たな身分証を交付され人生を再スタートさせるラストのシーンなんて鳥肌ものですね。
バスのエンスト、降り出した雪、そしてその年の大寒波を告げるエンドクレジット。もうエモすぎてエモすぎてヒャーッてなりましたよぼくは。そうか、これが新しいチャイニーズノワールなのか!!
というわけで、とても良い出来栄えの映画でした。面白かったです。


 

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  • 発売日: 2019/07/03
  • メディア: DVD