ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

天使の分け前

f:id:madamkakikaki:20200822192756j:image

天使の分け前 (2012) The Angels' Share


映画の舞台は、スコッチウイスキーの故郷スコットランドのグラスゴー。

金もない職もない学もないの三拍子揃った不良の兄ちゃん(ポール・ブラニンガン)がおりまして、彼が懲罰的社会奉仕中に出会ったウイスキーに魅せられ、しかも類まれなるテイスティングの才能に目覚めたことから、よし俺は人生やり直すぜとがんばるお話です。

f:id:madamkakikaki:20200731235528j:image

これだけ聞くと、「不良がテイスティングの才能に目覚め、それを活かして業界で華々しく活躍する、更生&サクセスストーリー」のような感じがしませんか。ベタ中のベタ。


ところがですよ、さすがはケン・ローチ監督、そんな陳腐な作品はお作りになりません。
「登場人物の身の丈をわきまえた話」とでも言いますか、特段ドラマティックな展開があるわけでもなく感動の涙で胸アツになるわけでもない。なのになんだ、この充実感は。


この「なんか知らんけど良かったよね」ってのが実はすごいことなんですね。何が言いたいかわかってくださる人おられたら、まことにありがとうございます。


というわけで、この兄ちゃんと社会奉仕の仲間たちが「あること」をするためにヒッチハイクの旅に出ます。なんせみんな不良で間抜けなので、「真面目にがんばろうぜ」とか言いつつ真面目に悪いことしたり、とんでもないヘマをやらかしたりします。

特に「ばかオブばか」みたいな奴がいてイライラするんですけど、とにかく超おもしろいです。

f:id:madamkakikaki:20200731235506j:image

社会の闇とか若者が抱える問題をきちんとベースに据えるのはやっぱりケン・ローチ監督らしいですね。でも本作はコメディです。上っ面の正義やモラルなんて含んでいない、そこが非常によろしい。


社会的弱者たちが織りなす日常の楽しい話、くだらん話、辛い話といったものを、身の丈で人情味たっぷりに描いたこの作品、わたしはとっても好きになりました。
先ほどわたしが「なんか知らんけど良かった」と言ったのは、つまりそういうことです。