ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

判決、ふたつの希望

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判決、ふたつの希望 (2017年 レバノン・フランス) L'insulte / THE INSULT


レバノンの首都ベイルートの住宅街。水漏れをめぐる些細な口論から始まった小さな事件が、やがて国を巻き込む大騒動に発展します。
レバノン出身のジアド・ドゥエイリ監督が実体験をもとに構想を練ったというこの作品、「どっちもどっち」では済まないエキサイティングな法廷劇と胸を打つ人間ドラマに、一時たりとも目が離せません。

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レバノンと言えば、1975年から16年間も宗教・人種・国家入り乱れての内戦状態にあった国ですね。
キリスト教とイスラム教、レバノン人とパレスチナ人、そしてレバノンを挟むイスラエルとシリアなどさまざまな勢力が対立していた、まさにカオス地帯。そんな内戦を今なお引きずるレバノンの現状に真正面から取り組んだ作品が「判決、ふたつの希望」であります。

善意で設置してもらった排水管を、余計なことすんなと叩き壊したトニー(レバノン人)。それに怒って思わずクズ野郎めと暴言を吐いたヤーセル(パレスチナ人)。もうここですでにヤバい気配むんむん。
暴言を謝れと迫るトニーに対し、なかなか謝らないヤーセル。2人の滑稽なほどの意地の張り合いがやがて暴力沙汰になり、裁判にまで発展してもう大変です。
てか一番迷惑被ってるのは双方の奥さんですよ。特にトニーの奥さんは妊婦ですからね、ワレいい加減にしいや、と言いたくもなりますよね。ほんとに男ってのはもう!!

というわけで、本作の半分近くが法廷でのシーンでありますが、激烈な論戦を繰り広げる弁護士と大騒ぎになる傍聴席、なんかどえらいオオゴトになったと困惑する本人たち・・・ と、どんどんエスカレートしていく法廷劇が実に面白いのです。
そして、はからずもこの裁判によって、レバノンという国の持つ悲劇の歴史や、トニーとヤーセルそれぞれが歩んできた辛い人生なんかも明らかになっていきます。このへんのぐっと引き込まれるストーリー展開は実によく出来ておりますよ。

様々な事情を鑑みて有罪か無罪か。
正義の定義は人それぞれでありますが、公正(フェア)が揺らいではなりません。裁判とは本当に難しいものだなあと映画を観ていてつくづく思いました。
またレバノン内戦のお話を通して、わたしたちは自国の歴史や他国との関係において何を認め、何を否定し、何を許すのか、また未来に何を残すか考えているだろうか、そして希望ある未来のために今わたしたちが取っている行動は果たして正しいものであるか、そんなことを思ったりもしました。

でもそこに「判決」はありません。この映画を観たあなたが自身でその答えを出してください、と言われているような気がします。とてもいい映画を観ました。