ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

僕たちのラストステージ

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僕たちのラストステージ (2018年 アメリカ・イギリス・カナダ) Stan & Ollie


日本でも「極楽コンビ」として親しまれた往年の米国コメディアン、スタン・ローレルとオリバー・ハーディの晩年のエピソード。
人生は喜怒哀楽、人を喜ばせたり怒らせたり悲しませるのは簡単だけれど、楽しませることってなかなか難しい。

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「ローレル&ハーディ」というお笑いコンビ、わたしは全く知りませんでした。実は彼らは今から70年以上も前、ハリウッド映画がサイレントからトーキーに移行する時代に人気を博したコメディアンで、言うなればお笑いコンビの元祖にあたる人たちなんですね。
今では当たり前の“ボケとツッコミ” という役割分担も彼らが始めたんだそうです。

そんなことは何も知らず観てましたら、まず思ったのは「これドリフターズだ!」「カトちゃんケンちゃんだ!」ということ。若い人にもわかるように言うと「加藤茶と志村けんのコント」です。
ドリフが彼らを意識したのかどうかは知りませんが、どうでもいい喧嘩から始まって最後はしっちゃかめっちゃかになるとか、上からタライが落ちてくるとか、二人の表情とジェスチャーだけで観客が爆笑するとか、そういうのがね、ドリフ全盛期世代のわたしにはドンピシャではまるわけです。”笑わせるだけでなく楽しませるコント” なんですね。

で、本作が面白いのはそんな彼らの黄金時代ではなく、落ち目になった晩年を描くところであります。
決して腕が落ちたわけではないけれど、時代のニーズが変わる、興行主との決裂、経済的な困難、相方の病気が悪化するなど、長い時間をかけて二人が培ってきたものが今にも崩れ落ちそうな気配です。
それでもファンというのは有難いもので、興行の最後の最後には二人の芸を愛する多くの観客が詰めかけ、満員御礼で幕を閉じます。
このへんさらっと書きましたが、もちろんそこに至るまでにはいろいろ大変なことが起こります。

もう一つ面白いのは彼らの奥さんたちです。超個性的な二人の奥さんのしゃべくり合戦はかなり見どころでして、どうかしたら本人たちより面白いです。
最初こんな奥さんたちで大丈夫かと思ったりしてすいません。誰よりも旦那さんのことが大好きで、誰よりも旦那さんの一番のファンだということがよーくわかりました。

原題がコンビ名ではなく『Stan & Ollie』なのは、本人同士が、また彼らと親しい人たちが二人をスタン、オリーと呼んでいたからなんだそうです。何とも素敵なタイトルじゃありませんか、ねえ。
邦題の『僕たちのラストステージ』も、ストーリーにふさわしくていいですね。
長くコンビを続けるというのは大変なことだけれど、それだけ彼らの間には他人が推し量れないほどの苦労や努力や、信頼や互いを思いやる気持ちなんかが積み上げられていて、それが「やっぱり君じゃなきゃだめなんだ」という言葉に集約されるのではないかなあと思います。

ハーディ役のジョン・C・ライリーは、毎日メイクに4時間かけて撮影に臨んだとのこと。ローレル役のスティーヴ・クーガンとの息の合った演技は、まるで本物を見ているようで楽しく素晴らしいものでした。
主人公に対してきちんと敬意の払われた、優しい伝記映画だと思います。

 

 

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  • 発売日: 2019/09/18
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