ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

家族を想うとき / 働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり

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家族を想うとき (2019年 イギリス・フランス・ベルギー) Sorry We Missed You / 監督:ケン・ローチ

 

マイホーム購入のためフランチャイズの宅配ドライバーとして働く父親とその家族が直面するさまざまな問題をリアリティーたっぷりに描いた『家族を想うとき』。

名匠ケン・ローチが引退表明を撤回してまでこの映画を撮った背景には、世界のあちこちで起きている“働き方問題” と、不条理な経済格差や貧困に圧迫される現代家族の姿があります。

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夫婦と高校生の息子・小学生の娘という平均的な家族構成のターナー家。

家計を助けるため母のアビーがパートの介護福祉士として時間外まで働いていますが、それだけではとてもやっていけない。

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父のリッキーは「フランチャイズの自営業なので努力次第ではマイホームも夢じゃない」という誘い文句を真に受けて、宅配ドライバーとして働くことにします。そして宅配用の車を買うために アビーが仕事に使っていた自家用車を売ってしまった。

なのでアビーは遠く離れた介護先へもバスで通うことになり、長い移動時間のせいでますます家にいる時間がなくなってしまうんですね。
当然子供たちは寂しい思いを募らせていきます。娘は不眠症や退行がみられるようになり、お兄ちゃんは学校をサボって悪友たちと悪さを繰り返す。


問題を起こすたびに親は学校に呼び出されますが、その時間は仕事を抜けないといけないので罰金を取られる。必死で働いてもお金が貯まるどころか借金がかさむ一方です。
家族と過ごす時間はどんどん奪われ、人の絆も壊れていくばかりで「この人たちは何のために働いているのだろう?」といたたまれない気持ちでいっぱいになります。
家族のためということはわかっているにもかかわらず、です。


原題の『 Sorry We Missed You 』とは 宅配の不在票に書かれた「お届けに上がりましたがご不在でした」という慣例表現のことで、お父さんリッキーの業務から取られています。
日本では「非正規雇用」という言い方をしますが、本作はリッキーのようにイギリスにおける「ゼロ時間契約」労働者の厳しい現状を描いた映画なんですよね。

たぶんケン・ローチ作品の中では『わたしはダニエル・ブレイク』以上に辛口で最も妥協のない エッジの効いた作品だと思います。
なので “家族を想う” ことには違いないのだけれど、そんなほんわかしたイメージで観ると打ちのめされます。


不在票には子供から見た家族不在という意味も込められてあるのでしょう。これはね、まさにケン・ローチ監督が再度放ったクリティカルヒットですよ。なんでこんな素晴らしいタイトルを変えちゃうかなぁー。

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イギリスに限らず「所得の格差・富の不平等」は、日本を含め豊かなはずの先進国において大きな問題であります。
特にコロナ禍の影響で自営業者や非正規雇用の労働者が苦境に喘ぐ中、それでも頑張って働いている人がたくさんいます。勤め人に限らず主婦の皆さんだってそうです。


だからこそ、人は支え支えられながら生きていて、わたしたちの生活は常に誰かの犠牲の上に成り立っているんだってことを忘れてはいけないと思うのですよね。


というわけで、みんな! 宅配のお兄ちゃんたちには全力でありがとうと言おうな!!