ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

シシリアン・ゴースト・ストーリー

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シシリアン・ゴースト・ストーリー (2017年 イタリア) Sicilian Ghost Story


シチリアの小さな村で少年の謎の失踪事件がおき、彼に思いを寄せる少女が行方を追います。
実際に起きた事件にインスパイアされた不思議で切ないラブストーリー。シチリアの美しい風景がファンタジーを際立たせます。

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本作は、1993年にシチリアで実際に発生した誘拐事件が題材となっています。
マフィアが内部告発をしていたメンバーを黙らせるため、その息子ジュゼッペを誘拐し779日の監禁ののち絞殺、遺体は硝酸で溶かされ湖に捨てられるという凄惨で最悪の事件。本作ではその一部始終が描かれます。
目を覆うような“その瞬間” の直接描写はないけれど、それでも13歳の少年が味わった痛みと苦しみを想像するに余りある、非常に辛いシーンに胸をグサグサ刺される思いがします。

しかしながら本作は事件映画として作られたわけではなくて、ジュゼッペに思いを寄せるルナが彼を必死に探すという設定のファンタジーなおかつピュアなラブストーリーとなっています。そこに何があるかと言うと、“鎮魂” です。

共にシチリア出身である本作の監督、アントニオ・ピアッツァとファビオ・グラッサドニアは、ジュゼッペの苦しみを想像し「憑き物のようにこびりついた」と話しています。
事件そのものはイタリアで知らない者がいないほどであっても、マフィアの息子というだけで死んでもなお冷たい目で捉えられている。遺体すらまともにないわけです。


まだ13歳だったのに大人は誰も寄り添わず、一人無残に死んでいったジュゼッペの魂が少しでも救われるように、ルナという架空の人物を登場させて「君のことを思い、忘れない人たちがいるんだよ」というメッセージを込めた鎮魂映画に作り上げたんですね。

現実と虚構が絡み合ったシーンや、独特なカメラワークで内容がつかみにくい部分もありますけれど、こういう映画にはっきりしろだのメリハリつけろだの言うこと自体が野暮ってもんです。ファンタジーですからね。
子供は知らなくていいんだとか、狭いムラ社会の暗黙のルールとか、大人社会の理不尽さとか、そういうものに抗う子供の気持ちを描いているのもいいなあと思います。髪を青く染めるとこなんか良かったなあ。

というわけで、一貫して主人公ルナちゃんの視点で描ききることで、多感で不安定な10代特有の感性と言いますか、悲しく切ないけれどどこか不思議でおとぎ話のような世界観の映画に仕上がっていると思います。
乗れる人は乗れる、乗れない人にはそこまで刺さらない、そんな作品でしょうか。わたしは好きですけどね。

それにしても、大人の都合で子供が犠牲になるってのは本当に許せんですよ。
ジュゼッペ君よ、天国でどうか安らかに。


 

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