ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

サタデーナイト・チャーチ

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サタデーナイト・チャーチ -夢を歌う場所-(2017年 アメリカ) SATURDAY CHURCH


LGBTの高校生がサタデー・チャーチに居場所を見出し、自分の夢に向かって強く生きるための一歩を踏み出すお話です。
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サタデー・チャーチとは、土曜日の夜に教会を開放して行う社会的弱者支援プログラムのこと。路上生活者とくに貧困にあえぐ若者やLGBTの人たちの憩いの場になっているそうです。


※この邦題は公募で選ばれたそうで『サタデーナイトフィーバー』に引っかけてナイトを入れたものと思われますが、「サタデー・チャーチ」というれっきとした名称がタイトルなのに、なんでこういう改変をするのか全くもってわからん。

 


さて、本作が長編映画デビューとなるデイモン・カーダシス監督。この人は自身もゲイを公言しています。実際にサタデー・チャーチでボランティアをした経験があり、それがこの映画を作るきっかけとなったそうです。
ミュージカル仕立てになっていますが、歌そのものは少なめでドラマ色のほうが強いです。

LGBTの生きづらさというのは昨今いろんな映画の中で描かれていますが、本作の興味深いところは教会すなわちキリスト教が関わっているという点です。


イメージ的に博愛の代表格のようなキリスト教ですけれども、実はかなり厳格な宗教であります。

特に保守派のキリスト教徒は強烈で、ゲイなんてもってのほか、病気扱いして嫌悪感をあらわにします。母親が夜勤のときに主人公ユリシーズと幼い弟の面倒をみている叔母さんがそうです。

この叔母さんの暴君ぶりがまあ憎たらしくてですね、とにかく「男らしく」を強要するし、ユリシーズが女物の服(母親の服)を眺めでもしたらひっぱたくとまで言うんですね。
で、弟はまだ8歳なので仕方ないっちゃ仕方ないんですが、お兄ちゃんのことをいちいち叔母さんに告げ口するので困ったもんです。

この暴君ババア叔母さんに代表されるような厳格なキリスト教(宗派)に対し、人間本来の尊厳や愛に立ち返るべくサタデー・チャーチを行う教会は少しずつ増えているとのこと。
わたしたち日本人にはあまりピンと来ないかもしれませんが、LGBTの人たちにとってのキリスト教はどうあるべきか、教会はどうあるべきか、監督はそんなメッセージを投げかけているようにも思えます。

学校でも家でも肩身の狭い思いをし、理解者もいない。そんな居場所のないユリシーズを救ってくれたのが、街で出会ったトランスジェンダーの人たちでした。
サタデー・チャーチの仲間たちはみんな優しくユリシーズを受け入れてくれます。

同じ境遇で共通の思いを持つ者同士がともに語らい、音楽やダンスを楽しみ、自分らしくいられる場所。これは何もLGBTだけでなく、いろんな理由で居場所がないと感じている人に必要なものでありましょう。


もともと綺麗なお顔のユリシーズですけれど、心地よい居場所をみつけて自分を解放していく姿はハッとするほど美しいです。顔の骨格なんか彫刻みたいで天才かと思いますね。

ルカ・カインは映画初主演だそうですが、頭のてっぺんから爪先まで繊細な演技が素晴らしかったです。妹さんがトランスジェンダーということもあり、しっかり理解したうえでユリシーズを見事に演じきりました。
登場人物みんなダンスが上手くて、80年代っぽい音楽やヴォーギングなんかが出てきたりするので観ていて楽しいのもいいです。シビアなテーマではあるけれど暗くない。
やっぱりうまく言葉にできないときは歌うのが一番だよね、って感じで唐突に歌い出すのも面白いですね。

80分でサクッと観られるので、寝る前の一本にも良さそうです。いい映画でした。


 

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