ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

オリ・マキの人生で最も幸せな日 / 幸せのリングで勝利した男

f:id:madamkakikaki:20200822130513j:plain

オリ・マキの人生で最も幸せな日 (2016年 フィンランド) Hymyilevä mies


世界タイトルマッチを控えこれから集中、という時に恋に落ちちゃったプロボクサーの物語。

謙虚で純朴な男の人間らしい人生のひとコマを、モノクロの16ミリフィルムで情感たっぷりに描きます。カンヌ映画祭「ある視点」部門のグランプリ受賞作品。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

フィンランド版『ロッキー』です。と言うより『ロッキー』を水で10倍に薄めて砂糖を加えてスライスレモンを添えたような映画です。どんな映画やねん。

f:id:madamkakikaki:20200829000845j:image

さて、オリ・マキはパン屋の息子でプロボクサーです。
ガタイがいいわけでもなく性格は消極的でついでに生え際も消極的 (いらん世話) 、人付き合いも苦手で非常にナイーブなオリさん。

フィンランド初の世界チャンピオン誕生か!と国中が沸き立ち周囲が勝手に盛り上がる中、知らない人々の期待を一身に担う状況に気が滅入り テンションだだ下がりです。

そんな時 はからずも友人の結婚式で見かけたライヤに恋をしてしまい、彼女がいないと不安で練習にも身が入らないという、マネジャーからしてみれば「おまえ何浮ついとんねん、女は足を弱くするんじゃ。試合までは女のことなぞ考えるなこのアホンダラ!」とビンタのひとつも食らわしたくなる状況に陥ってしまうんですね。

 

f:id:madamkakikaki:20200829000757j:image

だって好きなんだもん、いつも一緒にいたいんだもん♡♡

 

しかし決戦の日は刻一刻と迫ってきます。減量も上手くいっていないのに大丈夫かオリさん。あーもうヤキモキするなあオリは。いやオレは。

で、結局試合は行われるわけですけれど、その結果がどうこうというよりは ボクシングより彼女のほうが大事であるオリさんの正直すぎる感情と、飾らないありのままの日常を描いているところが非常に人間くさくて愛らしくていいなあと思える、そんな優しい結末なんですね。つまりスポ根より人情 です。


最初に書きましたように、本作はモノクロの16ミリフィルムで撮影されました。モノクロはカラーと違って地味で物足りないなどと思うなかれ、モノクロだからこそ光と影のコントラストが映えます。優しく懐かしい味わいがあります。
オリとライヤの幸せな瞬間を切り取ったような甘酸っぱいシーンの一つ一つが 60年代の空気とともに非常に美しい画となって心に刻み込まれます。や、素晴らしい。

映画のラスト、手を繋いで川べりを歩く二人がすれ違う老夫婦こそ、実は本物のオリ・マキとライアでしたというのをあとで知りまして、何ですのこの粋な演出はうぉぉぉぉん!といい歳をしてキュンキュンしながら悶絶したのは言うまでもありません。
小品ですがとっても温かくて素敵な映画でした。北欧映画ってやっぱりいいですね。