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新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

ニーゼと光のアトリエ / みんなで絵を描こう

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ニーゼと光のアトリエ (2015年 ブラジル) NISE - O CORACAO DA LOUCURA


精神疾患の治療においては、今でこそ薬以外に絵を描いたり物作りをしたりといった作業療法やアニマルセラピーなど 患者の気持ちを解放していく いわゆる“心の治療” が有効であると認識されていますが、かつてはロボトミー手術や電気ショックで患者の知能を低下させるといった 荒っぽいと言うより非人道的なやり方が最先端の医療技術だとされていた時期がありました。

ロボトミー手術と言えばディカプリオ主演の『シャッターアイランド』を思い出しますが、あれは要するに治療とは名ばかりの「何の意思も感情も持たない生きた屍増産システム」みたいなもんですよね。まああの映画は対象が精神異常の犯罪者でしたけどね。

そんな1940年代のブラジルで、当時のやり方に異議を唱え 作業療法による穏やかな治療を試みた一人の精神科医がおりました。そのお方こそこの映画の主人公 ニーゼ・ダ・シルヴェイラであります。
本作では、ニーゼ医師の作業療法を受けた患者たちが 数年後芸術家として展覧会を開催するまでに至る過程が非常にリアルに描かれています。

魂の抜けたような人から暴力的で手に負えないような人まで様々な患者がいますけれども、ニーゼ医師は一人一人に丁寧に向き合いながら彼らの人間性や個性を引き出していきます。
やがて「どうせ子供のお絵描きレベル」「所詮女のやることなんてこの程度」などと馬鹿にして高みの見物をぶっこいていた医師たちも その成果を認めざるを得ないほど患者たちの芸術的才能が花開き、それはプロの芸術家の心をも動かすことになるんですね。

思うにこれね、アール・ブリュットの先駆けと言っていいんじゃないでしょうか。

 

 ※ちなみに、アール・ブリュットに関連したこちらの作品もおすすめです。

精神障害者の自立という難しい問題をイタリア人らしいユーモアで表も裏もきっちり描いた映画 ↓↓↓

berukocinema.info

 


で、ここまですれっと書きましたが、ただでさえ男尊女卑の強い医療界で頭の固いジジイ先輩医師たちに疎まれながらの試みですから、ニーゼさんの苦労は相当なものです。
ワンコのくだりなんか、あまりの陰険さに怒りで頭から湯気が出るかと思いましたよね。あいつらこそロボトミーしていいんでねぇの。頭ほがして脳ミソ引きずり出してやろうか?ああ? (落ち着けオレ)


精神疾患の種類や度合いによっては必ずしも作業療法が有効だとは言いきれないかもしれない。
症状が良くなっても何かの拍子にぶり返すかもしれない。
それでも、ニーゼ医師のおかげで多くの患者たちが人間性を取り戻し、創造する楽しさや認められる喜びを知り、家族も含め生きる希望を持つことができたのですよね。
本作の最後で、ご本人が人生を締めくくるにあたり「どんな時代も1万通りの生き方や戦い方がある」と語る映像がありますが、この言葉こそニーゼ医師の強い信念と前向きな姿勢そのものであり、同じ女性として頼もしさすら感じます。

光・風・雨・・・この3つの要素が効果的に用いられているのもこの映画の特徴かと思います。
役者さんたちの凄まじい役作りにも度肝を抜かれましたね。これは本当に観てよかったと思います。

 

 

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  • 出版社/メーカー: デジタルワークスエンターテイメント
  • 発売日: 2018/11/07
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