ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

恐竜が教えてくれたこと / 僕がちょっぴり大人に近づいた夏休み

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サマーバカンスで家族とともにオランダ北部の島にやってきた11歳のサムは、地元で暮らす少女テスと出会う。
快活だが予測不可能な言動をするテスに振り回されながらも、サムは彼女の「秘密の計画」に協力することになる。それは、12年前に生き別れた父親を島に呼び寄せ 自分が娘であると知らせる、というものであった。

その一方で、サムにも密かに進めている計画があった。
全ての生き物はいつか必ず死ぬことを悟ったサムは、家族の中で自分が最年少であることから「生き残って一人ぼっちになっても大丈夫なように」と 一人に慣れるための訓練をこっそり始めていたのだ。

それぞれの計画を進めながら二人での時間を過ごすうち、サムは次第にテスに惹かれていく。



この映画の原作は、2013年にオランダで出版されたアンナ・ウォルツの児童文学「ぼくとテスの秘密の七日間」
2015年青少年読書感想文全国コンクールの課題図書にも選定されています。


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左が図書、右は映画の日本版ポスター



『恐竜が教えてくれたこと』 というので、いつ恐竜が出てきて何を教えてくれるのかと思いながら観てたんですが



恐竜は出てきませんでしたw



実はこのサム君、「生き物はいずれ死ぬ」ことに関して「地球最後の恐竜は、自分が最後の恐竜だと知っていたのかな? どんな気持ちだったのかな?」という 大人では思いつかないような、まったく答えの見つからない哲学的な疑問に思い悩んでいたわけです。なんと可愛らしいことよ!


で、この疑問がきっかけとなってサムは「一人ぼっちに慣れるための訓練」なるものを始めるわけですね。
もちろん家族には内緒なので、あとで「どこ行ってたんだ」とお父さんに叱られたりします。

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そんなこんなでこの映画、ストーリーがとっても面白いのであまりネタバレしたくなくて、まあとにかく観てちょうだいよと言って終わりたいくらいなんだけど、要は 子供の(精神的)自立の第一段階のお話 なんですね。


11〜12歳、小学校高学年あたりになると子供っていろんな変化を見せますよね。
背が急に伸びたり幼い顔がシュッとしてきたりと外見が変わってくるのはもちろん、親の決めることにことごとく反発してみたり、買い物とか遊びでも親と行くより友達を優先するようになる。

「ええー、ついこの間までママべったりだったのに… (´・ω・`)ショボ-ン 」と娘の後ろ姿に淋しく手を振っていたのは他ならぬわたしです。


とまあそれはさておき、友だちや同世代の異性 また親以外の大人と接することで見聞を広げたり社会性を身につけたりと、この頃の子供にとって「家族」という小さなコミュニティから外に出て学ぶことはとても大切なのでね、「精神的な親離れ(=自立)」はむしろ喜ぶべきことだと思います。

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元々おとなし目で引っ込み思案なところのあるサムは、「パパやママやお兄ちゃんが先に死んで自分が一人ぼっちになる」という前提でものを考えています。

そんな彼に 奥さんに先立たれ海辺で一人暮らしをしているおじいさんが言った、「大切な人との思い出をたくさん作るんだよ。手遅れになる前にね。」という言葉はとても響いたようです。
孤独に耐える訓練よりも、今自分の周りにいる人々とたくさん関わることのほうが大切だということに気付くんですね。

そしてそれは、自分だけでなく大切な誰かのためにもなることをサムは学びます。

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本作はオランダの映画ということで 存じ上げない俳優さんばかりだったんですが、みんな個性的で楽しくて 観ていて嫌な気のしない優しい青春ムービーでした。

子役の二人も本当に可愛くて、サムの甘酸っぱい初恋物語としても見応えがあったなあと思います。


ちょうどあの年代は女の子のほうが成長が早いので、男の子より少し背が高かったり おませで大人びたことを言ってドギマギさせたり、なんてこともあるあるですよね。
テスはまさにそんな感じの女の子なんだけど、大胆で度胸があるように見えて実は繊細でチャーミングという魅力的なキャラクターを上手に演じていました。

二人とも将来素晴らしい俳優さんになることでしょう。とっても楽しみです。

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原作が児童文学とあなどるなかれ。大人でも十分楽しめる、観る価値のある作品です。

小学生のお子さんがいるご家庭ならなおさら、ぜひ家族みんなで観てほしいですね。これは本当におすすめです。


作品情報
▶原題 My Extraordinary Summer with Tess
▶監督 ステフェン・ワウテルロウト
▶脚本 ラウラ・ファンダイク
▶製作年 2019年
▶製作国 オランダ
▶出演 ソンニ・ファンウッテレン, ヨセフィーン・アレンセン ほか