ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

誰がための日々 / 追い詰めているのは他人か、それとも自分か

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誰がための日々 (2016年 香港) 一念無明 / Mad World


家庭を顧みない父と弟、介護の必要な母、その母の介護を一人で担っていた長男。ある日介護中の事故で母を死なせてしまった彼は躁うつ病を発症し 1年間の措置入院となる。

介護うつ、希薄な親子関係、精神疾患者への偏見や差別などの社会問題を真っ正面から描いた力作です。
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香港で実際に起きた、エリート青年が介護うつになり親を殺害したという事件にインスパイアされた脚本による 非常に重厚な社会派ドラマであります。

主人公のトンが退院する冒頭のシーン、病状は薬で安定しているが家族の支えが大切ですよと医者に言われた父親は、自分が間借りするボロアパートにトンを連れていきます。
映画のポスターにもなっていますが、2歩あればどこにでも手の届くような超狭い物置みたいな部屋で、父と息子のぎこちない共同生活が始まります。

 

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仕事を口実に母を見捨てて逃げていた父を恨むトン、久しぶりに会う病気の息子の扱いに戸惑いながら過去を悔やむ父。
気にかけてくれるようで言葉の端々にトンに対する偏見や差別が見え隠れするアパートの住民たち。
そんな中でも、向かいの部屋に住む少年との交流はトンにとって唯一の楽しみで心穏やかになる時間でした。

しかしそれもある出来事によって失われ、しまいには出ていってくれとまで言われてしまう。なんだこの理不尽な仕打ち。おまえらアパートごと燃えてしまえこんちくしょう!


このあたりのシークエンスにはSNSによる晒し行為なども絡んできますのでね、本当に腹が立ちますよ。
おおトンや、可哀想なトン。(´ノω;`)ウウ

 

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原題の『一念無明』とは仏教用語で

「真理に暗いと余計な煩悩に悩まされる」 という意味なのだそうです。

“変なこだわりを持っているとシンプルな問題すら解決できない” とか “どうでもいいことに固執しすぎて大切なものを失う” とか、そういうことだろうと思いますけれど、本作の登場人物たちの多くがこの「一念無明」の状態で悩み苦しみ、傷つけ合っているわけですよ。


人生に艱難辛苦はつきものですが、辛いまま生きていたいと思う人はまずいません。少しでも楽になるように考え方を変えたり見る方向を変えたりして打開策を見出そうとするはずです。
でも「一念無明」だとそれもできない。

自分の人生は誰のものでもなく、また誰かの犠牲となって生きる必要もありません。しかし、だからと言って誰かを傷つけたり苦労を押し付けていいわけでは決してないですよね。
いやわかってるんですよ、わかってるけれど我々は悲しいかな、誰でもわかるような当たり前の簡単なことができないんです。と言うかしようともせず 人間関係はただただ複雑になって生きづらくなるばかり。そんな現状をまざまざと見せつけられたような気がします。


辛いシーンの連続に終始ため息、取り乱したトンがスーパーである行為をするくだりなんかはもう床に転がってウンウン唸るしかなかったんですけれど、トンとお父ちゃんはもうしばらく苦労が続くとしてもたぶん二人で知恵を出し合い、親子関係を修復しながら前を向いて進んでいくのだろうと思います。
そんな一縷の光を二人の笑顔に見た気がするラストシーンでありました。

あと、これは余談ですが トンを演じたショーン・ユーは福山雅治と工藤阿須加を足して2で割ったような顔だなと思いながら観てました。
ま、要するにイケメンってことですね。今度『インファイナル・アフェア』観ます!