ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

エリックを探して

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エリックを探して (2009年 イギリス他) Looking for Eric


何をやってもうまくいかない人生どん底の中年男の前に、憧れのサッカー選手が突如現れた。
これは夢か幻か。人生立て直しに向けた一世一代の試合が今、キックオフ!!
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マンチェスターと言えば、産業革命において労働者階級を中心に発展し、現在ではイギリス第二の都市とされております。世界有数のサッカーチーム “マンチェスター・ユナイテッド” の本拠地としても有名ですね。

本作の主人公エリックもサッカー観戦が大好きで、とりわけマンチェスター・ユナイテッドのスーパースターであるエリック・カントナの熱狂的ファンであります。
ある日自室に貼っているカントナのポスターに向かって愚痴をこぼしていたら、何とカントナ本人が目の前に現れて話を聞いてくれ、人生指南までしてくれると言う。エリックにとってはカントナはもう神ですからね、そりゃもう嬉しくてたまりません。

まあお気付きでしょうが幻覚です。他の人にカントナの姿は見えません。ちなみにカントナ自身が本人役で出演していますよ。この人は引退後俳優に転向したそうで、本作の原案もカントナが作ってケン・ローチ監督に話を持ち込んだそうです。面白いですねえ。
てか、ケン・ローチ監督もよく受けたなあと思うのですけれど、たぶん労働者階級の暮らしとか生き方とか団結力とか、そういうものがお話のベースにあるからでしょう。たぶんケン・ローチ監督じゃなかったらここまで味わい深く、また面白くは作れなかったと思いますね。

20歳の頃はロックンロールのダンスコンテストで優勝するほどイケイケ男子だったのに、今やバツ2のしょぼくれおじさんになったエリック。10代の二人の息子(後妻の連れ子)はやりたい放題だしヤバい奴らと関わってるし、自分は最初の奥さんとのわだかまりを30年も引きずってるし、情緒不安定になって事故ったりしてもうぐったりです。
エリックは郵便配達員として働いていますし郵便局の同僚にも友達がたくさんいますので、決して悲観的な境遇でもないんですけれど、自分ではどうにもできなくて「俺は負け犬だ」なんて言っております。

で、このネガティブエリックに「髭を剃れ」から始まり数々の名言とともに、ある時は優しくある時は厳しくアドバイスをしてくれるのがカントナご本人なわけですね。
ちなみに劇中に出てくる名言は、実際にカントナが現役時代に語ったものでありまして、このへんもなかなか面白いところです。

人生であれスポーツであれ、いくら指南を受けても実践するのは自分です。ああそうかと思うだけで行動しないなら何の進展もありません。
自分を変えるために、また大切な人を守るために行動をおこすエリック。それをサポートする友人たち。終盤のこのあたりは正直バカバカしいほどのコメディです。
いや、元がおとぎ話みたいな設定ですからいいんですが、本当にケン・ローチ監督かいなと思うような展開で(いい意味で)びっくりします。

でもね、観終わってまず感じるのは、映画全体が優しいということです。登場人物一人ひとりが魅力的で存在意義があります。
社会的弱者への愛にあふれるケン・ローチ監督の、他の追随を許さない人物描写が際立つ素敵な作品。サッカー好きの人はもちろん、誰にでもおすすめできる秀作です。

 

 

 

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  • 発売日: 2011/06/24
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