ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

この自由な世界で

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この自由な世界で (2007) It's a Free World...

あらすじ:職業斡旋業を立ち上げる。


結論から言うと、よく練られた脚本でとても良い映画でありました。
名匠ケン・ローチ監督が「麦の穂をゆらす風」に続いて放ったこの作品、ど根性シングルマザーのお仕事奮闘記、というと何だか健気な感じがしますが、そんなかわいいものじゃあござんせん。

出てくるのは底辺労働者、不法移民、政治難民です。そして彼らに日雇い仕事を斡旋しているのが主人公アンジーで、彼女自身もまた底辺層で働く者の一人です。


不当な理由で人材派遣会社をクビになり、仕事のノウハウを生かして職業斡旋業を始めたアンジー。持ち前のバイタリティでがんがん働き、自らの借金も返済するまでになるものの、悲しいかな、人はある程度お金を手にすると欲が頭をもたげてきます。もっと儲けたい、もっと金持ちになりたいと。


そこで彼女が目をつけたのが「不法移民からのピンハネ」、もちろんこれは違法行為です。

人並みの幸せを求め地道に頑張ってきた自営業者は、ここから人としての道を外れ、人として転落していくわけですね。


つまりこれは、わたしたちが生きている「自由主義経済社会」そのものです。本作における移民の立場は、経済の根っこを支える我々労働者と同じです。
自由主義経済では、貧乏人からむしり取った財産で金持ちが潤います。自分が幸せになるなら他人のことはどうでもいいのが自由主義社会です。人としての良心はどこへ行ったのでしょう。そんな問いかけのようにも思えます。

何だかんだ大変なことがありながらも事業は軌道に乗ったようで、アンジーは秘書を引き連れ、出稼ぎ人調達のためウクライナへ飛びます。


現地での説明会のシーンで映画は終わりますが、スパッと切った感じのラストが何とも辛辣というか、弱者がさらに弱者を踏みつけるような社会構造を如実に表していますよね。

まさにケン・ローチ監督らしい、痛烈なクリティカルヒットであります。いやはや、素晴らしい。


 

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  • 発売日: 2009/04/03
  • メディア: DVD