ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 / それは一枚の絵葉書から

f:id:madamkakikaki:20200821213426j:image

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 (2018年 フランス) L'Incroyable histoire du Facteur Cheval


アルプス山脈のふもとの小さな村オートリーヴに現存する世界的な観光名所「シュヴァルの理想宮」を33年かけてたった一人で作り上げたフェルディナン・シュヴァルの伝記映画。今から100年前のお話です。┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

寡黙で人付き合いの苦手なシュヴァルさん。郵便配達の仕事中に奇妙な形の石に躓いて転んだことがきっかけで石の魅力に取り憑かれ、頭の中のイメージだけで古今東西の文化が入り交じった奇想天外な建造物を作り始めます。
ちなみにシュヴァルさん、手先は器用のようですが建築や石工やデザインに関しては全くの素人です。

シュヴァルの理想宮は「夢想」とか「狂気(いい意味での)」といった言葉で美化されていて、そこに家族のドラマが絡んでくることで この映画自体が非常にエモい作品になっている気がします。
つまり宮殿建造の動機として「愛する娘のため」というのが強調されていて、それがのちのち花嫁姿の孫娘に亡き娘がオーバーラップするという美しいシーンをより引き立たせるわけですね。

元々この人には独特の美意識とか建造物への興味や憧れがあって、本を読んだり絵葉書をコレクションしたりしながら自分なりの宮殿の青写真を描いていたのでしょう。


実際、建造に着手したのは娘が産まれる少し前です。なので「娘産まれた嬉しいな、よし、この子のために宮殿を作るぞ!」となったわけではない。むしろ何をしていいかわからず抱っこすらできず、娘をあやす奥さんを窓の外から眺めてるような人ですからね。 

 

f:id:madamkakikaki:20200731233600j:image

とは言え 娘が大きくなるにつれ愛おしさも増し父親としての自覚もしっかりしてきて、この宮殿が「愛する娘のため」のものに変わってきたのは間違いありませんで、ひいては自分を理解し支え続けてくれた奥さんのためのものにもなりました。


この奥さんがまたよく出来た人で素晴らしいですね。結婚したときはまさか旦那が30年近くも給料の大半を宮殿作りに費やすなんて思いもしなかったでしょうに。このへんの夫婦のドラマもなかなか面白くて惹き込まれます。


当時「頭のおかしい男が作った変な建物」と言われたシュヴァルの理想宮は、彼の死後数十年たってピカソをはじめとする有名な芸術家たちに認められ、「天才による遺物」としてフランス政府によって重要文化財に指定されました。
またアウトサイダー建築の代表的な事例として大学の教材に取り入れられるなど、その遺構価値は非常に高いものと言われています。

 

f:id:madamkakikaki:20200731233633j:image

実はこの映画、なんと撮影に実物を使用したとのこと。建造途中のシーンはCGで一部を消すなどしながら編集したそうです。どうりでリアルな質感SUGEE!となるはずだ。てかフランス政府よく許可したなあ。


宮殿が完成してカメラがハイアングルになり、その全貌が画面いっぱいに映し出されたときの驚きったらないですね。超でかいんだもの。
これはもうわたしの“死ぬまでに一度この目で見たいものリスト” 入り間違いないです。

 

f:id:madamkakikaki:20200731233715j:image

フランスの名優ジャック・ガンブランの好演とアルプスの美しい自然が素晴らしい、とてもいい映画でした。