ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

エンテベ空港の7日間 / あえてテロリスト目線で事件を描く真意とは

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エンテベ空港の7日間 (2018年 イギリス・アメリカ) Entebbe / 7 Days in Entebbe

 

1976年の夏、テルアビブ発パリ行きのエールフランス機がテロリスト4人に占拠され ウガンダのエンテベ空港に強制着陸させられる。犯人グループの要求はパレスチナ過激派などの解放と500万ドルの身代金。
当時世界中が注目したハイジャック事件と人質救出作戦に新説を加え スリリングに再現した社会派スリラー映画です。

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ハイジャックされた飛行機には イスラエル人が多数搭乗していました。多くの自国民を人質に取られたイスラエル政府は 犯人との交渉か軍事的解決か悩み抜いた結果、事件発生から7日目に「サンダーボルト作戦」と銘打ったエンテベ空港奇襲作戦を決行します。
この作戦は「奇跡の救出劇」と称され、またテロリストの要求に対しては断固戦うという国際政治上の先例となったと言われておりますね。

実はこの作戦、話題性の大きさから事件後3度も映画化されています。なのでこの映画で4作目になるわけですが、過去の3作品と大きく違うのは「イスラエル軍の特殊部隊SUGEE!」てなヒーロー物ではないということです。


奇襲作戦の勝利に重きをおくのではなく、ハイジャック犯・人質・乗務員・イスラエル政府(ラビン首相やペレス国防大臣)・ウガンダ独裁政権(アミン大統領)・パレスチナ解放戦線など 関係するすべての人々にスポットを当てながら事件の全容に迫っているんですね。

 

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もう少し言うと、救出される側ではなくテロリスト側の目線でこのハイジャック事件を映像化したということです。これは事件から40年以上たっても今なお解決を見ないイスラエルとパレスチナの問題を考える上で非常に重要なことではないでしょうか。


もちろんテロそのものはどんな大義名分があろうと断じて許せない卑劣な犯罪でありますけれど、その背景に何があるのかを知らなければ 単純に善悪論を振りかざすことも 理想論だけをもって和平を語ることもできないとわたしは思っておりますのでね。


緻密な取材にもとづく秀逸な脚本、犯行の中心人物を演じたダニエル・ブリュールとロザムンド・パイクの熱演、光と影を巧みに使い分けた表現豊かな撮影技法、一見無関係のようで実は超強烈なメッセージが込められたコンテンポラリーダンス、どれをとっても心にグイグイ迫るものがあります。いやー、これぞ映画の力。

それにしても最近のロザムンド・パイクは飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍していますね。
先日レビューした『プライベート・ウォー』にしろ本作にしろ、台詞や演出に頼らず表情ひとつで深みのある名演技を見せつけています。今最も注目したい女優さんですね。や、素晴らしい。

 

 

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