ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

国家が破産する日

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国家が破産する日 (2018年 韓国) 국가부도의 날 / DEFAULT


右肩上がりの経済成長を遂げ 国民の八割が中流意識を持ち始めた1997年の韓国。好景気が続くと誰もが信じて疑わない中で いち早く通貨危機を予測し国家の破産を危惧する者たちがいた。この国は滅びてしまうのか、それとも・・・。

「その時、政府は何をした── 」これは実にいいキャッチコピーですね。さて政府は何をしたのでしょう。観る前から興味津々です。

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「ヘル朝鮮」という韓国のスラングをご存知でしょうか。
受験戦争の激化や若者失業率の増加、自殺率の高さに加え 富裕層やエリート官僚による縁故採用やそれに伴うスキャンダルの頻発など、現代韓国社会の生きづらさを「地獄のような朝鮮」と自嘲した言葉です。若者を中心にSNSでよく使われていますね。

そんな「ヘル朝鮮」の遠因とされる1997年の通貨危機と 当時の政府が行った売国的な経済政策を痛烈に批判したのが本作『国家が破産する日』でありまして、原題では『不渡り』という言葉が使われています。
なんとも衝撃的なタイトルですが、これ、お隣の話かぁ〜などと呑気に画面を眺めている場合じゃないと思いますね。日本だっていつ「ヘル日本」になるかわかりません。コロナ要因を差し引いても、です。

外資重視・株主重視に対して労働者は軽視、大企業と中小企業の待遇格差は広がるばかり、そして非正規雇用という名の奴隷制度。
通貨危機こそ起きたことはないけれど、政府の経済政策はこの映画の内容と何ら変わりません。
持つ者と持たざる者がいて、持つ者はより豊かに 持たざる者はより貧しくなるだけ。日本は半地下こそないけれど『パラサイト』で描かれた社会構造は同じです。反論のある人がいるとしたらその人はきっと相当なお金持ちでしょう。

というわけで 長々と貧乏人の愚痴を垂れ流しましたけれど、本作のお話はざっと言えばこうです。

通貨危機を止めようとする真っ当な公務員(韓国銀行職員)のキム・ヘス、危機を逆手にとって儲けようとする拝金主義者のユ・アイン、ひたすら政府を信じて翻弄される町工場の経営者ホ・ジュノ、という三者の視点で当時の韓国社会を描きます。
ちなみにキム・ヘス演じるハンはモデルがいるわけではなく、こんな人がいたらなあという監督の思いで作られたキャラクターなんだそうです。やっぱりこの人がヒロインだと作品が締まりますね。ステキです。流暢な英語も素晴らしかったなあ。

悪役もなかなか良いキャスティングで面白かったです。面白かったと言っても笑えるシーンなどひとつも無く、たぶんわたしは終始眉間にシワを寄せて観ていたと思いますが それくらい真剣に観てしまうストーリー展開だったということですね。とにかく腹が立ってしょうがない。
空売りで大儲けしたユ・アインにも「この金の亡者があぁぁ!」と後ろから蹴りの一つも入れたい気持ちでフガフガしてたんですが、彼の “先を見る目” と「俺は政府に騙されないぞ!」という意気込みは見倣いたいと思います。

それにしてもチェ・グクヒ監督、長編映画2作目にしてこれだけ知的にも映画的にもレベルの高い作品を撮っちゃうとは驚きです。また差を広げられてしもうたな、日本。
無駄なシーンもやり過ぎ感もなく 痛烈にぶち込まれた政府批判の一方で 国を思う気持ちや人の優しさが垣間見える、たいへんいい出来栄えの社会派ドラマでした。や、素晴らしい。