ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

明日、君がいない

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明日、君がいない (2006年 オーストラリア) 2:37


ある日、ある高校で、午後2時37分に誰かが死にます。
10代の若者が抱える深い悩みや葛藤をこれでもかとリアルに描き出し、カンヌで話題をかっさらった衝撃的な作品。
弱冠19歳の新人監督が撮ったとは思えないほど完成度の高い秀作です。これはお見事。
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『明日、君がいない』という奇妙でインパクトのある邦題のこの映画。結論から言ってしまいますが、これは多くの人が観るべきです。ティーンエイジャーのみならず大人も、子を持つ親も観るべきだと思います。
舞台はオーストラリアの高校なので日本の高校生と単純に比較することはできませんが、学校や家庭という大小の集団の中で生活している10代の若者という点では同じです。
”主な” 登場人物は以下の6人の高校生です。

①マーカス... 自称ガリ勉。優秀な弁護士である父親からの期待にプレッシャーを感じつつも、父親のようになりたいと思っている。

②メロディ... マーカスの妹。何一つ親は褒めてくれず何かと趣味を制限する。兄と違い自分は親から期待されていないと感じている。

③ルーク... スクールカーストの上位にいる、自称イケメンマッチョの脳筋バカ。サラと付き合っている。

④ショーン... ゲイであることをルークにからかわれ学校で居場所がない。マリファナに溺れている。

⑤サラ... ルーク愛してる!彼もアタシを愛してる!の自意識過剰のボイン(死語?)。彼との結婚を夢見ている。

⑥スティーブン... 足が悪く排尿障害を持っていてからかわれる。でもいじめられていることを親に言えない。

見るからに「こいつムカつく!」みたいな子もおりますけれど、まだまだ精神も人生経験も未熟な10代。イキっていても笑顔を作っていても、それぞれが誰にも話せない悩みを抱えています。
そんなごく普通の6人の高校生の一日を群像劇のように描いていきますが、同じ場面を違う角度から”別の子の視点” で繰り返し見せてくれたりするのでなかなか面白いです。

でも面白いと言ってばかりもいられません。本作には「登場人物の一人が午後2時37分に自殺する」という事実がまずあります。犯人探しならぬ自殺者探しです。
10代の彼らの気持ちになってみれば、みんなに可能性があります。観ているこちらとしては気が気じゃありません。一言一句聞き逃すまいと真剣に見入ってしまいます。

さて自殺したのは一体誰でしょうか。ラスト間際でわかったときの驚きったらないですね。驚きましたけれども、お話を振り返って考えてみると、これは大いにありうることだと思います。
若者に限らず誰かが自殺して、インタビューされた知人や同級生が「まさかあの人が自殺するなんて」「悩んでいるようには見えなかった」などと答えているのをよく見ませんか。
まさにそれです、この映画は。“無関心” です。何となくおわかりいただけるでしょうか。

ムラーリ・K・タルリ監督は、友人を自殺で失い 自らも人生に絶望して自殺しようとするも一命を取り留めた経験があるそうです。この映画は、その経験をふまえ弱冠19歳で脚本を書き、2年かけて完成させた渾身のデビュー作なんですね。
エンドクレジットの亡き友人にあてたメッセージが心を打ちます。
繰り返しになりますが、これは恐ろしいほど秀作。それ以外言いようがないです。邦題も素晴らしい。

 

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  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: DVD