ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

家へ帰ろう

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家へ帰ろう (2017年 スペイン・アルゼンチン) El último traje


アルゼンチンに住む仕立て屋のおじいちゃんが、故郷ポーランドの親友に最後のスーツを届ける旅に出ます。70年も会ってないのに大丈夫?
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ホロコースト絡みでおじいちゃんのロードムービーと言えば『手紙は憶えている』が頭に浮かびます。
「えっ、あんたそっちなん?」とびっくらたまげるどんでん返しが衝撃的な映画でしたが、こちらのおじいちゃんは正真正銘のユダヤ人です。ぼけてはいませんが足が悪く、家族に内緒の旅なのでそれはもうたいへんです。

高齢で足が悪い(切断しないといけないほど)ことに加え、心理的な苦痛もあります。
おじいちゃんはホロコーストという凄惨な経験をしていますから「ポーランド」と口に出すこともできません。またドイツに対しての憎しみや恐怖があるのでドイツには一歩たりとも足を踏み入れたくない、でもドイツを通らないとポーランドには行けない。ただでさえ痛々しいのに難問山積、誰かおじいちゃん助けてあげて。

で、この映画で面白いのはおじいちゃんの行く先行く先で助けてくれる人々です。ほとんどが女性です。
安宿の女主人をはじめ、人類学者や看護師など、おじいちゃんの旅の目的を理解し彼女たちなりに手助けしてくれるわけですね。

そもそもおじいちゃんは娘たちから家を売っぱらわれ老人ホームにぶち込まれる寸前でしたので、何かと心が尖っております。特に人類学者の女性のときなんかは、わたしドイツ人よと聞いた途端にあからさまに嫌悪感丸出しになります(気持ちはわからんでもない)。
まあそれでも彼女たちの親切な行動でおじいちゃんの心が少しずつほぐれていくのは見ていて微笑ましかったです。
ちょっと嘘くさいほど「いい人」ばかり出てくるんですけれど、逆にそれが胸にぐっとくるんです。本来人と人って、こうあるべきだよなあ、こんな出会いいいなあ、としみじみ思うわけですね。

この映画は、パブロ・ソラルス監督がたまたま入ったカフェで ”高齢の父親が古い親友に会うための旅をした” という客の話を耳にして、そこから本作のストーリーが出来たとのこと。また、監督の祖父が戦争を逃れアルゼンチンに渡ったポーランド人だということも作品作りに生かされているようです。
もともと舞台俳優で脚本家でもある監督ということで、とてもよく練られた脚本になっていると思います。特に会話ですね。
地味になりがちなロードムービー、しかもホロコーストとおじいちゃんという題材でここまで会話のシーンが魅力的というのは、監督の文才とセンスの良さにほかなりません。とてもいい映画だと思います。


 

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  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: DVD