ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

ドント・ウォーリー

f:id:madamkakikaki:20200822163509j:image

ドント・ウォーリー (2018年 アメリカ) Don't Worry, He Won't Get Far on Foot


皮肉たっぷりのユーモアで人気を博した風刺漫画家、ジョン・キャラハンの半生を描いた伝記映画。今をときめくホアキン・フェニックスがこちらでも素晴らしい名演技を見せてくれます。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

本作はもともと故ロビン・ウィリアムズから持ち込まれていた企画で、当時監督をオファーされていたガス・ヴァン・サントがロビンの遺志を継ぎ、20年もの紆余曲折を経て出来上がった映画なんだそうです。

ちなみに原題の「Don’t worry, He won’t get far on foot.」というのは、冒頭のシーンで出てきたジョンの漫画のセリフの一部で、これは「奴は歩けないんだ。どうせ遠くには行けないさ」という彼の自虐ネタです。
邦題が「ドント・ウォーリー」だけになっているのがいまいち理解できませんが、間違っても「心配ないよ」という意味ではありません。逆にこの人、心配だらけだから!

重度のアルコール依存症だったジョンは、自らの不注意で交通事故を起こし(正しくは酔っ払った状態で同じく酔っ払いが運転する車に乗った) 、四肢麻痺となり車椅子生活を余儀なくされました。
皮肉なことに運転していた友人は軽傷で済み、それがきっかけで二人は疎遠になってしまいます。

アルコール依存症であることも障害者になったことも、全て誰かのせい。なんで俺だけがこんな不幸な思いをしなきゃならないんだ。ちゃんと俺の世話をしろ。元はと言えば俺が養子だからだ。産みの母親に捨てられたからこんなふうに育ったんだ ──。
そんなジョンの放恣な思考や傲慢な態度に、福祉事務所の担当者や介護人もうんざりです。そりゃそうだ。

で、困ったちゃんのジョンが立ち直るきっかけとなるのが禁酒会です。同じ悩みを持つ仲間と腹を割って話すことで、ジョンは少しずつ冷静に自らを省みることができるようになるんですね。
禁酒会の主催者であるドニー(ジョナ・ヒル)が「他人のことじゃなく君について話せ」と言っていたのがとても印象に残っています。

ジョンはドニーに諭されて、過去に迷惑をかけた人々に一人一人謝罪して回ります。そして最終的には”自分を許す” というキリスト教的な着地をするわけですが、ここまでクリアしてやっと、ジョンは風刺漫画家としての才能を開花させることができたんですね。
なんかサラッと書きましたけれど、2時間弱の映画では到底語り尽くせない苦労がたくさんあったと思います。本人もそうだし、周囲の人々も大変だったでしょう。
それでもジョンを見捨てることなく助けてくれたドニーや彼女(ルーニー・マーラ)や禁酒会の仲間たちがいたから彼は救われ、天職を得ることができたんですねえ。

この人のイラストは何かで見たことがあったのですが、ジョン・キャラハンご本人のことは全く知りませんでした。
デフォルメが面白いし線がびよびよしていて味のある絵だなあと思ってましたら、不自由な両手でペンを握っていたからなんですね。劇中でもいくつかイラストが出てきますが、どれもとっても可愛いしピリッと皮肉の効いたセリフも楽しいです。

私生活でもパートナーであるルーニー・マーラが彼女役ということもあり、二人の自然で微笑ましいシーンがとっても良かったですね。ホアキンよ、この幸せ者がっ!!


 

ドント・ウォーリー[Blu-ray]

ドント・ウォーリー[Blu-ray]

  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: Blu-ray