ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡

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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡 (2014) Birdman or The Unexpected Virtue of Ignorance

【 ヒーローにさよならを。】


皆さんの中でバットマンと言えば誰ですか。わたしはマイケル・キートンであります。歳がばれますか、ふん、歳なんざとっくの昔にばれとるわい。わはは。
というわけで、バットマンで一世風靡したマイケル・キートンが「バードマンというキャラクターで一世風靡したけど落ち目になったのでブロードウェイで再起を目指す俳優リーガン」を演じるコメディ映画です。コメディと言いつつ何かいろいろ辛いし大変です。

先日「22年目の記憶」(韓国映画)を観たときにも思ったんだけど、役者が役に入り込みすぎたり役を食ってしまうと後々支障が出て大変なこともあるのだなあー。
劇中でリーガンが空中浮遊したり超能力を使って物を壊したり動かしたりするシーンがあるのですが、あれはバードマンの能力であって完全なる妄想です。幻聴もそうです。バードマンで手にした俳優としての名声とプライドが頭の中を支配していて離れないわけですね。

でも落ち目になってしまったことはわかっていますから葛藤もあります。ああ、この人は完全に混乱しているな、というのがわかります。


この映画で特筆すべきは、2時間のうち1時間45分にも及ぶワンカット長回し(風)の撮り方であります。

あくまで(風)ですが、リーガンの動きをひたすらカメラが追いますので、自分もそこにいるような感覚におちいります。これはすごいですよ。あとで調べたら撮影監督は「ゼロ・グラビティ」のエマニュエル・ルベツキと書いてあって思わず膝を叩きましたね。


で、残りの15分はというと、これは観客にお任せします的なラストですね。

わたしは「こうだったらいいなあー」と思いましたけれど、たぶんお話はあのお芝居のバーン!!で終わったと思っています。そう、文字通りの幕引き。


それにしても、劇中あれだけハリウッドの風刺や批評家の悪口を言いまくっていながらアカデミー賞を取ったというのが本当に不思議ですよね。

マイケル・キートンだから? まぁそれはともかく脚本が素晴らしいのは間違いありません。
キャスト陣も主役を引き立てつつしっかり存在感を出していてよかったですよね。エドワード・ノートンなんか最高のキャスティングじゃないの。ええ。


映画にしても舞台にしても、いい芝居をするためには現実と架空の世界がわからなくなるほど「素の自分」をどっかに置いてこなければいけないこともある。家族を犠牲にすることもある。役者さんてほんとに大変だなあと改めて思います。
でも彼らのおかげでこうしていい映画をたくさんわたしたちは観られるわけでね、本当にありがたいと思います。

演技の粗探しばっかりして辛口批評家気取りしてる人は一度役者をやってみるといいよ。