ガツンとくるやつ、ください。

新作・旧作・ジャンル問わず。海外映画が好き。作品により多少のネタバレ含みます。

1917 命をかけた伝令 / 進め、走れ、そして生き延びろ!

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第一次世界大戦真っ只中、1917年4月のフランス。若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクに重要な任務が命じられる。
それは撤退中のドイツ軍を追撃せんとする最前線の部隊に、明朝までに作戦中止の命令を届けること。

実は進行する先にはドイツ軍の罠が張り巡らされており、この伝令が間に合わなければ、1600人もの味方兵士全員が命を落とすことになるのだ。

刻々とタイムリミットが迫る中、二人の危険かつ困難なミッションが始まる…。



この映画、公開前から「ワンカット」という言葉がさかんに使われていますが、サム・メンデス監督に言わせれば本作は「ワンカット映画」ではなく「ノーカット映画」つまり「全体を通して流れに切れ目がない映画」ということのようです。
実際、目を凝らしていてもどこが繋ぎ目か全くわからないし、そんなことを考える余裕もないほど映画に見入ってしまいます。

また「流れに切れ目がない」というのは、時系列どおりにお話が進むということです。
カットバックで見せたり回想シーンを挟んだりせず、ただひたすら主人公の動きについて行く。

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主人公を追うワンカット風の映画といえば『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 が思い浮かぶんだけども、本作がそれと違うのはカメラが登場人物の先にも行くということです。
追うだけではなく先回りして待ち構えていたり、次の行く手を指し示したりと、まるでカメラ自体に意思があるような動きをするんですよね。


これ、どなたかが書いてたんですけどまさに “テレビゲームの感覚” に近い。要するに自分が主人公のような気持ちになるほどの緊張感と没入感を味わえるってことです。
なので、比較的若い世代にも受け入れやすく観やすい戦争映画ではないかなあと思います。てか若い人たちにこそ観てほしいですよね。


『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の感想はこちら↓↓↓
berukocinema.info


さて、伝令の任務を受けて二人が出発するのは昼間です。
劇中、大まかな距離と所要時間が示されるものの、半日以上の時間経過を2時間という映画でどう描くのか。ワンカット風と言いつつ所々を端折るのか。
観始めてしばらくしてそんな疑問を抱いたわけなんですが、さすがはサム・メンデス監督、わたしの素人くさい心配など吹き飛ばすような見事な工夫がなされていました。


そしていよいよここから、スコフィールドが残留ドイツ兵の襲撃を受けながら廃墟と化した夜の街を疾走するという緊迫感に満ちたシーンへと突入していきます。

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またここでは、親を失った赤ちゃんの面倒をみる女性と出会うシーンがあります。
これがまた良くてですね、束の間の息抜きという意味もさることながら、実はここでのやり取りこそが ラストまで触れられなかったスコフィールドのバックグラウンドに繋がっている、という非常に意味深いシーンなんですね。

こういうちょっとしたエピソードを自然に入れ込むというところにも、サム・メンデス監督のセンスの良さが見て取れます。



夜明けから翌朝、つまり終盤のシークエンスでは、前半ブレイクが一緒にいたときのいろんな伏線が活かされてきます。
わたしが特に好きなのは、川に落ちたスコフィールドが精根尽き果てかけたときにチェリーの花びらが水面に舞ってくるシーン。
あの花びらを見てスコフィールドはブレイクとの約束を思い出し、再び心を奮い立たせるんですよね。ここは本当に美しく力強い、いいシーンだと思います。


軍人として任務を遂行すべきという強い使命感。そして戦友のため、その兄のため、また自分自身が何としても生き延びなければならない理由がある。


激しい爆撃の中を全力で走るスコフィールドの姿は『走れメロス』の物語を彷彿とさせます。
頑張れ頑張れ、弾に当たるなよ、死ぬんじゃないぞスコフィールド!

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ちなみにこの全力疾走シーンで 塹壕から飛び出してきた味方兵士とスコフィールドがぶつかって転ぶんだけど、あれは演出じゃなく本当にぶつかってしまったそうですよ。面白いね。
お互い怪我してないといいけど。ま、おかげでいい画が撮れましたよね、監督!


ラストは状況こそ違えど、オープニングと同じカットになっているのがまた心憎いというか、スコフィールドの心中を思うと感慨深いものがあって、胸にぐっときました。
このへんの撮影秘話もなかなか面白いんですが、これから観ようかなという人はぜひDVDの特典映像も観てほしいですね。
時間があるなら監督の解説付き映像でもう一度振り返ってみてはいかがでしょうか。


要所要所にすごい名優が配置され、ワンシーンのみにもかかわらず重厚なインパクトを残しているのも見所です。




作品情報
▶原題 1917
▶監督 サム・メンデス
▶脚本 サム・メンデス
▶製作年 2019年
▶製作国 イギリス・アメリカ
▶出演 ジョージ・マッケイ, ディーン=チャールズチャップマン